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不死身の漢!

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『メタルギアソリッド5 ファントム・ペイン』考察① なぜキーファー・サザーランドが主役なのか?

ゲーム メタルギアソリッド

キーファー・サザーランドがビックボスを演じることの意味とは?

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とうとう今日9月1日に『メタルギア』シリーズ最新作『メタルギアソリッド5 ファントム・ペイン』(以下『MGS5』)が発売されます。

今作では主人公スネーク(ビックボス)役にハリウッド俳優のキーファー・サザーランド氏が起用され、俳優の顔をゲーム上でリアルに表現するフェイシャル・モーション・システムによってキーファーの顔をリアルに再現し、全く新しいスネークとなっています。

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左が新スネークのキーファー・サザーランド、右が旧スネークのデヴィッド・ヘイター。
やっぱり降板は残念。

 

しかしキーファー氏が起用されたことで、これまでのシリーズで英語版スネークを演じてきたディビッド・ヘイター氏は降板することになってしまいました。

ですが今回のキーファー・サザーランド版スネークは意外と違和感がありません。実際シリーズのファンからもそれほど激しい反発は起きていないようです。
おそらくその理由はキーファー・サザーランドが長年出演し、彼の当たり役となったTVシリーズ、『24 -TWENTY FOUR-』にあります。

一体なぜ彼が起用されたのでしょうか?

今回は、『24』のジャック・バウワーと『MGS5』のスネークは明らかに共通している部分がある、というお話をしたいと思います。
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『メタルギアソリッド5 ファントム・ペイン』 ストーリー。

前作『ピース・ウォーカー』から1年後の1975年。かつての米軍の英雄にして、現在は祖国を捨てた「ビックボス」ことスネーク率いる「国境なき軍隊」は核を保有するほどの巨大組織となった。
そんな中ピース・ウォーカー事件でスネーク達の元に潜入した工作員の少女、パスがキューバにある米軍基地に捕らえられ、尋問を受けているという情報を入手する。

彼女から情報を入手するためスネークは単身でキューバ米軍基地に潜入し、拷問を受けていたパスを救助する。だがそれは罠だった。

スネークが不在の隙に謎の軍事組織「XOF」が「国境なき軍隊」の本部を襲撃し、壊滅状態になってしまう。スネークもそこに土壇場で駆け付けるが、「XOF」がパスの中に隠した時限爆弾によって彼女は爆破され、その爆発でボスも重傷を負い、こん睡状態になってしまう。

そして9年が経った1984年、スネークは昏睡から目覚める。
組織を奪い、仲間を大勢殺された恨みを晴らすため、復讐のためにスネークは再び戦いの地に降り立つ・・・。

 

 「悪に墜ちる、復讐のために」 ビックボス堕落の物語。


【RED BAND】『MGSV THE PHANTOM PAIN』E3 2013 ...


この『MGS5』で描かれるのは伝説の英雄ビックボスがいかにして悪に墜ちていったかというシリーズ最大の謎です。
彼は物語の序章である『グラウンド・ゼロズ』において自身の基地であるマザーベースを失い、大勢の仲間を殺されます。
そこから『ファントム・ペイン』の物語が始まるのですが、上の予告編から分かる通り、ビックボスはあらゆる汚い手段で復讐を果たそうとします。拷問、殺戮、破壊など、全ては「仲間たちのため」という大義の元に実行されます。

今回の『MGS5』では「人種」「復讐の連鎖」といった重いテーマが描かれるとのことで目を向けてしまうような残酷なシーンもあり、復讐の名のもと行われる敵との仁義なき闘いの中で墜ちていくビックボスが描かれるようです。

そしてこの暴走するビックボスをキーファー・サザーランドが演じるということには実は意味があるのです。
なぜなら彼は前から敵と戦うために暴走する男を演じているからです。

そう、『24 -TWENTY FOUR-』のジャック・バウワーです。

テロと戦うためなら手段を選ばない英雄ジャックを長年演じてきたキーファーが、手段を選ばず戦うことによって心が壊れていく英雄ビックボスを演じるのです。

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拷問と『24 -TWENTY FOUR-』

今回『MGS5』では「拷問」が一つのキーワードになっています。「MGS5」の序章である『グラウンド・ゼロズ』では舞台がキューバ米軍基地となっており、そこで登場人物が非合法の拷問を受けているというストーリーでした。さらに『MGS5』の予告編の中でもビックボス達の新しい組織「ダイヤモンド・ドックス」が敵を拷問にかける姿が見られます。

拷問でピンと来た人もいるでしょうが、キーファー・サザーランドが2001年から出演しているドラマシリーズ『24 -TWENTY FOUR-』においても拷問は非常に重要な要素です。

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上が『MGS5』の拷問シーン。下が『24』の拷問シーン。ちなみにジャックが拷問してるのは実の弟。ひどい!

 

『24』は架空の対テロ組織CTUに所属する凄腕エージェント、ジャック・バウワーがアメリカを狙うテロリスト達の計画を阻止するまでの24時間を描きます。
作中での1時間につき1話で、全24話という斬新な構成で第1シーズンは世界中で大ヒット。日本でも『ツインピークス』、『X-ファイル』以来の大ヒットとなり、日本で現在も続く海外ドラマブームの先駆けになりました。

しかし世界中で大ヒットすると同時に、『24 -TWENTY FOUR-』は大きな問題と議論を引き起こすことになります。

それが「拷問」です。

『24』のファンならお分かりのように、『24』を他と違う特別なドラマにしていた要素の一つが劇中何度も描かれる拷問シーンです。物語の中でジャック・バウワーはテロリストから情報を引き出すため、時に組織の命令で、時に組織を抜け出して単独でも非合法な拷問を繰り返します。
強烈な痛みを引き起こす薬物の使用。指を折る、もしくは切り落とす。ナイフで膝を刺す。電気ショックなど、ありとあらゆる拷問を行います。
なんと『24』は最初の5シーズンで67回の拷問シーンがあったとのことです。1シーズン24話なので結構な量です。

なので当然問題になりました。

アムネスティやヒューマンライツ・ファーストなどの人権団体は早い時期から『24』の拷問描写を問題にし、ヒューマンライツ・ファーストはこうした拷問を美化しているようなドラマへの対抗策に、拷問の実態を現実的なものとして描いた作品を評価する賞として「エクセレンス・イン・テレビジョン・アワード」を2007年に創設しています(第一回受賞は『LOST』でした)
他にも有名なところでベストセラー作家のスティーブン・キングが『24』の大ファンであるとしながらも、「国のためらなら拷問をしてもいいんだと正当化している部分がある」と苦言を呈しています。

 

『24』の背景にあるもの。対テロ戦争、イラク、捕虜虐待・・・。
『24』の放送が開始されたのは2001年の11月6日で、アメリカで同時多発テロが起きた2001年9月11日のわずか三か月後のことでした。
ブッシュ政権が対テロ戦争を開始し、アフガニスタンに攻撃を開始したのが10月ですので、その一か月後ということになります。
同時期に同じくテロを題材にしたシュワルツェネッガー主演の映画『コラテラル・ダメージ』が一年間の公開延期になったことを考えると、これは相当すごいことです。
(この時期は日本でもテロを扱う作品は自粛という形でTVで放送されなくなったり、レンタル店でも一時的に貸し出しできなくなったりしていました)

『24』が過激なドラマになっていった背景には2001年の同時多発テロから始まった対テロ戦争、そして2003年にはイラク戦争へと、戦火が次第に拡大していったことがあります。

イラク戦争はアメリカ国内はもちろん、多くの国で反対のデモが起き、「対テロを名目にした石油目当ての戦争」とまで言われました。
「イラク政府が大量破壊兵器を保有し、アルカイダと繋がっていている」というのがアメリカ政府の言い分でしたが、実際にはどちらも間違いであったことが後に明らかになります。
しかし当時のブッシュ政権のメンバーは大統領を含むほとんどが強硬なタカ派であり、さらに9.11テロによって国民の間で高まった愛国、国防ムードの流れは止まることはありませんでした。

アメリカは「自衛戦争」と称し、2003年3月にイラクに侵攻します。

開戦当時はアメリカ国民の半分がこの戦争を支持し、反対する国民との間で国論が二分してしまいます。さらに愛国者法の成立で情報機関による国内の監視も強化されるなど、戦争や安全保障の是非を巡りアメリカ国民同士での対立が激しくなります。

そして2004年にアブグレイブ収容所での捕虜虐待事件が起きます。
イラクにある米軍管理のこの収容所において、日常的に捕虜に対する虐待が続いていたことが明らかになったのです。
さらに同じ年に『MGS5』でも出てきたキューバのグァンタナモ収容所においてもCIAなどによる捕虜に対する水責めなどの苛烈な尋問が明らかになるなど、2001年以降アメリカ政府が行っていた違法な活動が次々に明らかになっていきます。
イラク開戦当時は戦争を支持していた国民も次第に疑問を感じるようになり、ブッシュ政権の支持率は下がり始めます。

対テロ戦争における超法規的活動を正当化するように描いてきた『24』でしたが、2006年にはとうとう米軍関係者が『24』のスタッフに抗議する事態になり、実際にイラクで尋問を担当している担当官は現場で「『24』の尋問をそのまま真似する兵士が出てきた」と『24』が兵士に悪影響を与えていると証言しました。

そしてその後『24』は路線変更を余儀なくされます。

 

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『グラウンド・ゼロズ』にも登場したグアンタナモ刑務所こと「キャンプ・デルタ」。
アメリカ国外のためアメリカの法律は適用されない。

 

スネーク(ビックボス)と ジャック・バウワー。
今回の『MGS5』においてアフリカ、アフガニスタンなど、ビックボスは世界中に飛び、様々なウェット・ワーク(汚れ仕事)を行います。
全ては組織と仲間たちのためという大義があるからです。予告編の中には子供を撃つシーンまであります、
前作『ピース・ウォーカー』においてスネークは組織の核武装を成し遂げます。それは「抑止力を持ち、パワーバランスを保つため」という名目ですが・・・。
最終的にビックボスは独立国家「アウター・ヘブン」を立ち上げ、核を振りかざすことによって世界に戦いを挑むという初代『メタルギア』のストーリーまで行きつくことになっています。
これは「愛国者達」という世界を支配する組織に対抗し、彼らを倒して世界を開放するための戦いだったと後のシリーズで明らかになります。

そうすべては「大義のため」なのです。

 

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予告の中で一番衝撃を与える子供を撃つシーン。

 

果たしてビックボスはどこまで墜ちていくのでしょうか。はたして「大義」という理由だけで自分をそこまで正当化することができるものなのでしょうか?

そしてそんなビックボスを演じるのはキーファー・サザーランド、大義のためなら手段を正当化する男ジャック・バウワーなのです。

 

積み重なっていく罪と自己正当化の果てに何を見るのか。

2007年に放送された『24 -TWENTY FOUR-』シーズン7はこれまでのシリーズとは違う内容でした。
ジャックは議会の公聴会でこれまで行ってきた拷問や非合法な捜査を糾弾されます。それに対してジャックはこう言い返します。

「何も後悔はしていない。私は必要な時に必要なことをしたまでだ」

 しかし時を同じくして民間軍事会社がアメリカ国内でテロを引き起こし、その目的はアメリカ政府に対する復讐であったことが明らかになります。彼らはアメリカを守るために戦ったにも関わらず、その方法が暗殺、拷問、民間人の殺害だったためアメリカ政府から解体に追い込まれていたのです。(これもほとんど本当の話ですが)
彼らはジャックにこう言います。

「君こそ英雄だ。我々は国を守るため必要なことをしたにすぎない」

さらにジャックの元部下であり、死んだはずのトニー・アルメイダはなんとテロリストになり、この事件に関与していたのです。
トニーの目的は復讐であり、自分の愛する妻を奪ったテロリストを殺すために彼らの組織に潜入し、敵を欺くために罪の無い大勢の人間を殺してしまったのです。
彼はそれを全て正当化し、こう言い放ちます。

「俺がいなければより大勢の人間が死んでいた! 俺は人々を救ったんだ!」

 

彼らはジャックの写し鏡のような存在だったのです。

 

シーズン7の終盤、ジャックはテロの首謀者を逮捕しますが、大きな権力を持つその男は有罪どころか起訴することも難しいことが明らかになります。
それに対してジャックを心から尊敬し、彼の捜査を擁護してきたFBIの女捜査官ルネ・ウォーカーは、男を拷問しようと言います。さもなきゃ全てが無駄になると。

そこでジャックが話すのが『24』屈指の名シーンでもあるこのセリフです。

 

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「俺はずっと自問自答してきた。バスに50人の人質が乗っていれば俺は他のことが見えなくなる。

どこかで思ってる、彼らを救えば自分も救われると」

ところが小さな一歩から一線を越えてしまうと、気づいた時には間違った方向に全力疾走している。そうなったら後は最初の一歩を正当化するしかない。
「ルールを守らねばならない」、頭ではよくわかっている。

 

 

  ただ俺の心が納得できないんだ 」

 

 

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いかがでしょうか。考えれば考えるほど今回のスネーク(ビックボス)役になぜキーファー・サザーランドが選ばれたかわかってくるのではないでしょうか。

『MGS5』プレイするのが本当に楽しみですね。

 

追記:
ちなみに対テロ戦から波及し、「自衛」の名のもとに行われたイラク戦争はその後泥沼化、アメリカ軍は4000人以上の死者を出し、イラクの民間人犠牲者は約10万人。
イラク治安部隊その他の死者を合計すると、2011年のオバマ大統領の戦闘終結宣言までに50万人あまりが亡くなりました。
米軍の占領統治の失敗からイラク国内では宗派対立が激化。イラク軍を解体したことで行き場を失った兵士たちは反米武装勢力となり、最終的にはテロ国家ISISの台頭に至ります。
2001年から始まったアフガニスタンでの戦争も終わりが見えず、現在も継続されています。
どれだけ正当化しようとも、人は一線を越えてしまったらその代償として大勢の人間が傷つくということなのでしょう。

「人は怪物と戦うとき自らも怪物にならぬよう気を付けなくてはならない」

「自制心」というものがどれほど大切なのか、人は考える必要があります。

 

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